CommunicationDesign の可能性。

実はこのクラス、5年連続して学生の半数以上が、広告コンペやデザインコンペにおいて、なにがしかの賞を受賞して卒業していきます。このコラムではその成果がなぜ得られたのか?

竹内ゼミの教育について、進めているコミュニケーションデザインや、授業内容について、ご紹介しておこうと想います。

 
コミュニケーションデザインは社会学。

現在、ほとんどの若者が、スマートフォンやSNSを活用し、ちょっと前までは考えられないくらい個人と個人、個人とコミュニティとの関係性が複雑な時代を迎えています。特に私たちの関わっているデザイン領域では、その関係性の多様化にあわせて、守備範囲はビックバンなみに広がりを見せ、細分化が進み、従来のデザインというイメージにこだわりさえしなければ、デザイン分野は無限の可能性を持った成長分野と言えます。

そこで、竹内オサムデザイン研究ゼミでは「デザインは社会学だ」という視点で、デザインが出来る出来ない、絵が上手い下手ではなく、社会にとって有益な人材をどうやって育成していくかという、一般大学と同様の視点で教育にあたっています。

 

上手な学生を育てるのではなく、優秀な学生を育てる。

そこで考えてみると、人を評価するときに「優秀」と言う言葉をよく使います。もちろん何に対して優秀なのか?という指標が多数存在するのですから、その評価は多種多様であってしかるべきなのですが、確実に言えることは「何かの役に立つ人」が優秀ということです。

実は、その優秀な(社会の役に立つ)人材を育成することがデザイン教育の本質です。そのため、多くのデザイン教育機関では「社会を見据えた実践教育」を実施しようとしています。

ただ、実際には実践教育をおこなうには様々な壁があり、それぞれの教育機関は壁を乗り越える方法を模索している状況です。

 

なぜ芸大では、本当の意味で実践授業が行えないのか?

理由は簡単。会社の新人研修を考えてみてください。多くの新人を一人の指導担当が面倒見て研修するのは最初だけ。新人は先輩社員に預けられ同じ方向を向いた一連の共同作業で力をつけていくものです。後は同僚としての仕事を通して先輩のスキルを盗むのです。

一方、教育現場では、課題は実践風に工夫されていたとしても。教員が準備した課題を学生が回答するという関係性は変えにくい。実は、その関係性を変えないかぎり、本当の意味での実践教育は行えないのです。さらに学生ごとに性格も特性も違うので、その特性にあわせたマンツーマン指導が必要になってくる。そんなことは、効率を求められる現在の教育機関では現実的ではない。だから大学では形式だけ実践授業になりがちなのです。

 

教員がコーチになれば学習効果が上がる。

でも従来の教員と学生の関係性を変え、教員と学生が同じ意識を持って課題に取り組めれば、学生は、教員のスキルや価値観などをもっと深いところで共有し、学ぶ意識を変えることが可能になるはずです。

実はこのクラス、教員が課題を考えるのではなく、世の中に山のように実施されているコンペから課題を選択し、教員は学生の考えた目標に、どう向き合うべきか?のアドバイスを加える。つまり学生が自ら課題と学び方を決めているのです。学生が選手で、教員は先輩でありコーチである。自分自身がハードルを上げて課題制作に挑む。

そして教員は成長段階を見て、タイミングをよくミッションを与えます。つまり、実際に一般企業とのマッチングを行うのです。すると学生の向上心がメラメラと燃えあがり、結果として外部表彰を得られるレベルまで、自分の表現力を押し上げる意識形成ができるのです。

この方式のメリットは、課題の決定権が学生にあるため、課題に幅ができ、結果としてマンツーマン的な授業形態になってしまうこと。

教員は学生の成長段階にあわせ、アドバイスと刺激を与えるだけ。技術ではなく発想法や思考力を伸ばすことが、伝えたいという欲求を高め、結果として表現技術を押し上げる。

つまり表現技術の指導は後回しにすることが、学生の意識を高め、このクラスの、異常な受賞率を実現したのだとすれば、表現力追求一辺倒では逆に表現力は上がらない気がしています。

 

基礎を重視し、コンペを狙うことに抵抗感のある指導者も少なくないでしょうし、落選したときの影響を懸念される方も少なくないでしょう。でも、賞を取る取らないは、正直どうでも良いのです。賞を取ることが教育の目的ではなく、目標を立てる、制作意識を高くもつ。学生の段階ではそちらの方が重要だと感じています。そういう考え方の教育もあっても良いのではと思っているのです。

© 2017 Kyoto Saga University of Arts Department of Design

Visual Communication Design : DESIGN-MON